【ミステリー小説】読み手の心情翻弄する『その女アレックス』の面白さ。

 

先日読んだ一冊のミステリー小説が、今までに無いくらい読み手の心情を2転3転させる内容で驚いたという話。

本書は序盤から物語に引き込まれてしまいます。


美人な女性、アレックス。

夜道、彼女がパリの路上を歩いていると数メートル先に白いバンが片輪を歩道に乗り上げて停まった。

そのバンが乗り上げて狭くした歩道とバンの間をすり抜けようとしたアレックス。

その時に人の気配を感じたが時すでに遅し。

振り向く暇なく肩甲骨の間を殴られ息が出来ず倒れ込んでしまったアレックス。

アレックスが何かに掴まろうと手で空をかいている最中に、その男に髪をわしづかみされ腹部を殴られる。

そしてそのままバンの荷台へと蹴飛ばされる・・


それはここ数日アレックスをつけていた中年の男だった。


理由も分からず殴られ、叩かれ、傷みつけられ、気を失うアレックス

気が付くとまた髪を掴まれ引きずられ、吐くほどに蹴りを入れられて‥


序盤で話が進みすぎて、「え?この本まだまだページ数あるのにもう終わっちゃわない?」

そんなに書くことある?

題名からして彼女(アレックス)主体の話だと思ってたけど違うの?


と、読み手が心配になるほどの進み具合で、アレックスは今にも死んでしまうのでは?とハラハラさせられます。



話が進むにつれ何故?なぜ?

と自問自答し、自身の心情が目まぐるしく変わっていくのが面白い内容です。


可哀そうなアレックス→ なんて女だアレックス→ 表面だけじゃ分からない!裏があるのか、アレックス→ ちょっと残酷すぎて受け止めきれないよアレックス(涙)


と、ページが進むごとに感情の整理が追い付かなくなっていきます。


話の中では誘拐犯を追う刑事たちも魅力。

主人公、カミーユ・ヴェルーヴェン警部は過去に妻を誘拐されそのお腹の中に居た子、共々惨殺され今もなお苦しみ続けている。

カミーユ・ヴェル―ヴェンの母親はニコチン依存症だったため胎児の時の栄養不足からカミーユの身長は、大人なのに145㎝と低身長。

そんなカミーユと彼を取り巻く刑事仲間も素敵な人たちで、悪口を言い合いながらも愛がある彼らのやり取りがまた面白い。


『その女アレックス』はこのヴェル―ヴェン・シリーズの第2作です。

第一作目は『悲しみのイレーヌ』。


ただ日本での発行は『その女アレックス』が先に発行されたそうです。

一作目を読んでいなくても物語の内容は異なるので全く問題ないです。


この本の著者はPierre Lemaitre(ピエール・ルメートル)というパリ生まれの作家。

現代フランスのミステリ界を代表する作家の一人で脚本家としても知られています。

しかし、作家としてデビューしたのは2006年、55歳の時と遅咲き。


原題『Alex』はイギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞を受賞しています。

日本では「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」ほか4つのミステリ・ランキングで1位を獲得。


話が逸れてしまいましたが、


『その女アレックス』は残虐でグロテスク、悲惨で悲痛な物語です。


おすすめかと言われたら、読まない方が良いです。と言うかもしれません。

いや、でも読んだ方が良いと言うかもしれません。(どっちや)


それくらい、悲しいけど本当に話の作りが面白い。


毎回変わる展開にどうなっちゃうの?とワクワク・ドキドキ・・


何より、さっきまでこの人の味方だったのに、数ページ後にはあっちの味方。と私の中の正義が変わっていくのが面白かったです。


自分の中の正義が変わるってどういうこと?

意味わかんない。

という方はどうか読んでみて感想を聞かせてください。


あなたの正義が変わるかもしれません。



―――― 本書の裏表紙の解説 ――――――


おまえが死ぬのを見たい―――男はそう言ってアレックスを監禁した。

檻に幽閉され、衰弱した彼女は死を目前に脱出を図るが・・・

しかし、ここまでは序章に過ぎない。

孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。

イギリス推理作家協会賞受賞。

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シリーズ化されているヴェル―ヴェン・シリーズですが、

他の本も読みたいようで読み進めるのが怖いというのが正直な気持ちです。


まして1作目はカミーユの愛妻が惨殺される内容だと分かっているので既に切なく苦しい。

ですが、この人の書くミステリは読者の裏の裏の裏をかいて、とても引き込まれる。


多分あなたもページをめくる手が止まらなくなり、何も手が付けられなくなることでしょう。


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